書庫の設計について、前回は書庫環境についてお伝えしましたが、今回は収蔵資料の増加に対応するための長期的な計画に関してご紹介します。

恒久的に資料受入れを行う書庫の設計では、増え続ける資料にどのように対応するのか、長期的な方針を当初設計段階から検討しておく必要があります。

1)書庫が満架になるまでの期間 - 書庫内の段階整備

書庫内を、供用開始時にすべて整備せず、資料の増加に合わせて段階的に整備することで、ライフサイクルコストの低減を図る方法があります。

段階整備をするかしないか、または何段階の整備とするかは、トータルコスト、施設運営への影響などから、総合的に判断します。

書庫の規模や資料増加率などによって、段階計画の有効性は大きく変わります。

(1)計画手順と留意点

まず、発注者から提供されるデータなどをもとに、竣工後の各年次について、収蔵資料数を予測します。
それをもとに、整備済の書庫が満架になる前に、次の段階の書庫整備が完了するよう、将来計画を策定します。

書庫を一体空間とせずいくつかの室に分け、室単位での段階整備とすることで、各段階の工事の際、整備済書庫の書庫環境への影響を抑えることができます。

書庫として整備されるまでの期間は、一般倉庫として活用されるケースが多くみられます。

(2)書庫内段階整備の方法1 - 書架の段階設置

書庫の建築工事までは完了しておき、書架のみを段階的に増設する方法です。

イニシャルコストを低減できるほか、特に電動集密書架や自動書架の場合は、当初から設置する場合に比べて、維持費や耐用年数を大きく節約できます。

(3)書庫内段階整備の方法2 - 書庫内装・設備の段階整備

書架のみでなく、書庫の内装・設備の一部までを段階的に整備することも考えられます。
特に、機械設備の耐用年数が10年程度であることを考えると、長期未使用空間への空調換気設備を最低限とすることは、合理的な方法と言えます。

2)満架後 - 増築

既存書庫がすべて満架になった後は、新しい書庫建物を増築し、資料受入れを継続することが考えられます。(正確には、満架になる前に増築書庫が完成するよう計画します。)

敷地条件や予算の関係から、国内においては恵まれたケースと言えます。

書庫増築を計画する場合は、遡及など、通常の増築時の留意点とあわせて、以下に注意する必要があります。

(1)接続方法

増築計画では一般的に、遡及を回避または軽減するため、既存部分と増築部分の接続方法を簡易化する傾向にありますが、書庫の増築に関しては、庇の差し掛けや、解放式渡り廊下による接続は、資料動線の一部が外部化することにつながるので、原則として避けるべきです。

(2)既存書庫への影響

増築工事の際、既存の書庫や資料動線の環境に悪影響を与えないよう、既存部分の大幅な改修を前提としない、工事動線まで検討しておく、などの配慮をしておくことが望ましいです。

以上、資料増加にあわせた長期的な書庫計画に関して紹介させていただきました。
実務等において参考になる部分がございましたら、ぜひご活用ください。