既存住宅の取引において、買主は住宅の質に対する不安を抱えているのが一般的です。
しかし、既存住宅は個人間で売買されることが多く、一般消費者である売主に広く情報提供や瑕疵担保の責任を負わせることは困難です。

このため、不動産取引業のプロである宅地建物取引業者が専門家による「建物状況調査」の活用を促すことで、売主、買主が安心して既存住宅の取引ができる市場環境を整備することを目的として、平成28年6月に宅地建物取引業法が改正されました。

ここでは「既存住宅状況調査技術者」が行うことができる「建物状況調査」に関して詳しくお伝えいたします。

1) 既存住宅状況調査の概要

調査方法は、「既存住宅状況調査方法基準」が国土交通大臣告示で定められており、「既存住宅状況調査」に関する講習を修了した既存住宅状況調査技術者は、調査方法基準に定められている水準及び方法に従って公正に調査を実施する必要があります。

(1) 既存住宅状況調査の実施者とは?

既存住宅状況調査は、講習を修了した「建築士」のみが行うことができます。また、調査を行うことができる既存住宅は、建築士としてその設計等を行うことができる建築物の範囲と同じです。

(2) 既存住宅状況調査の対象部位及び方法とは?

3つの調査から成り立っています。
一つ目は「構造耐力上主要な部分の調査」、二つ目は「雨水の侵入を防止する部分の調査」、三つ目は「耐震性に関する書類」の確認(書類の有無のみ)です。

調査は原則として非破壊で行い、足場の設置等が必要となる調査や、移動が困難な家具等により隠蔽されている部分や点検口がなく調査できない部分についての調査はしません。

しかし、調査できなかった理由を書面に残しておく必要があります。また依頼主の意向によっては、追加で図面との整合性を確かめたり、耐震性に関しての調査も行ったりすることがあります。

2) 既存住宅売買瑕疵担保責任保険とは?

宅建業者が売主となる場合、宅建業法第40条に基づき2年間の瑕疵担保責任が義務付けられます。宅建業者以外の個人が既存住宅を販売する場合は、瑕疵担保責任は義務付けられていません。それぞれの場合に対応した保険制度が用意されていますので買主・売主ともに安心して取引を行うことができます。

建築士をお持ちのみなさまは「既存住宅状況調査技術者」になると、「既存住宅状況調査」を行うことが可能です。ぜひ、講習を受講の上、実際の業務に役立てていただければと思います。