前回は、文化財建築の中でも、特に民家建築に使用されている材種に関してお伝え致しました。

今回は、風食による用材の年代判別に関して詳しくお伝えしていきます。特徴をきちんと理解することで、その文化財をより良い状態に保存・活用することが可能になります。

1) 用材の風食による年代判別

風食が起きるのは、建物のうち外気にさらされている部分です。それで、基本的には「建物の外部」を調査します。(建物の内部は風食しませんので調査しません)

(1) 「風食なし」の場合

平成時代の用材であると考えられます。柱や長押の表面に木目がほとんど立っていない状態です。手で触れた時に木目があまり感じられず、表面がツルツルしています。

(2) 「少し風食」の場合

昭和時代の用材であると考えられます。柱や長押の表面に木目が立ち、ザラザラしているのが特長です。

(3)「かなり風食」の場合

明治時代から大正時代の用材であると考えられます。柱や長押に木目が立ち、雨のかかる部分は朽ちてボロボロとなっています。また、材質によっては風食の仕方に差が出ますのでご注意ください。

用材別の風食の特長としては、マツは、大きく木目が凸凹しています。スギやケヤキは、やや軽微であり、ヒノキはかなり軽微です。

クリは、雨のかかるところはひどくひび割れています。ツガは、木目がきれいに立っていて、全体的に色はこげ茶です。

(4)「ひどく風食」の場合

100年前以上の用材であると考えられます。柱と長押や、柱と貫などの接合部で調べます。接合部をよく観察すると、接合部分より沈み込んでいる部分の深さが風食による深さであると考えられます。

それらの接合部が適さない場合は節との差で調べることもできますので節の周りの沈み込み部分の深さをご観察ください。

風食による年代の目安は、風食部分が1分(3mm)以上だと江戸・明治初期ごろで、3分(10mm)以上だと、中世・江戸初期ごろであると考えられます。

おおよそ、100年で1分(3mm)風食すると考えられるので参考にしてください。

以上のように、風食による年代判別は、虹梁や蟇股などがない建築の大まかな年代判別にも用いられます。

そして、後世の改造箇所の検出にも応用できますので判別方法としては有用です。

文化財における「風食による年代判別」を理解し、これらを踏まえてより良い状態で文化財が修理・活用されますよう、実務にお役立いただければと思います。