建築基準法における、2017年施行になった改定内容を詳しくお伝えいたします。今年施行の建築基準法の改正は1件です。

1) 「階段の蹴上げ」「踏み面寸法」の緩和

建築基準法の2014年度施行の改正において、政令第23条第4項が追加されて、告示で「階段の幅」「蹴上げ」「踏み面寸法」が緩和されました。

当時は、小学校用の「階段の蹴上げ」が中学校用の寸法まで緩和されていましたが、2017年9月26日改正・施行で緩和が追加されました。

(1)緩和の具体的内容に関して

法第23条第1項の表の(4)で「幅」75cm以上、「蹴上げ」22cm以下、「踏み面」21cm以上としているものを、幅は変えないで、「蹴上げ」23cm以下、「踏み面」19cm以上に緩和しています。

小学校の階段緩和と同じように、両側手すりと踏面の表面を滑りにくくすることの条件はあります。

(2)改正の理由

2017年9月26日の技術的助言で、「近年、既存の戸建て住宅をグループホームやシェアハウス等へ用途変換するニーズが拡大しているため、ストックの有効活用を促進するため」とされています。

6月9日に閣議決定された政府の成長戦略「未来投資戦略2017」の中で、政府は空き家などをグループホームや保育所としての活用を図るため、既存建築物を多用途に円滑に転用するために建築規制の合理化を図ることをうたっています。今回の改正は、同戦略を受けたものです。

(3)今回の改正における利点

今まで、住宅からシェアハウスなどへの用途変更を行う際に、「階段の蹴上げ」や「踏み面」の規定がネックになって断念せざるを得ないことが数多くありました。

特に、不特定多数が利用する「シェアハウス」や「高齢者向けグループホーム」などは、通常建築基準法では「寄宿舎」として扱われ、特殊建築物になります。

戸建て住宅から特殊建築物に用途変更する際には、一般的に確認申請が必要になり、建物全体を現行の建築基準法に適合させる必要が出てきます。

つまり、階段の要件が厳しくなりますので、階段の改修をする場合に現状より広いスペースが必要になり、大幅なコスト増に繋がっていました。

今回の建築基準法改定により、階段改修部分の大幅なコスト増を抑えることが可能になります。

しかし、これらの緩和の内容に関しては、戸建て住宅を「寄宿舎」等へ用途変更する際には有効であると思いますが、新築の場合には、以前の階段の基準を採用された方が利用者のためにはより使いやすい施設となる可能性が有ります。

これらのことを踏まえて、今回の建築基準法の改正内容を、実務へ生かしていただければと思います。