兵庫県豊岡市にある「城崎温泉」は、柳並木に木造三階建て旅館が立ち並ぶ日本の代表的な温泉地景観を持っています。

日本でも、木造三階建て旅館が最も集積して残っている場所の一つですが、安全性や快適性などを時代に合わせてどのように保存・活用して行っているか、詳しくご紹介していきます。

1) 現存する木造三階建て旅館

現在、城崎温泉には木造三階建て建築物は200件あり、一番多いのは商用兼住宅で、半数が築50年を過ぎています。

旅館建築のように経営という視点から考えなければならないケースと、商用兼住宅という商い重視の視点から考えなければならないケースなど、それぞれの視点からの対策が必要です。

商用に限ると、課題は「経営コストの増大」と「老朽化対策」が課題でした。

(1)木造三階建てを活かす

事業継続するためには、建物そのものと、事業そのものの価値を上げなければいけません。外観は景観に合わせて町並みを維持し、かつ新しい価値を与えていくことが大切です。

このような温泉地は他にはないことを再認識した上で、新しいコンテンツを作る際に相談に乗れる仕組みを用意しておくことが必要です。

一例ですが、「城崎温泉博覧会」という事業の中で、建て壊しのあった木造三階建て建築物を一時利活用した企画を実施し、保存につなげる取り組みがありました。

持ち主は活用例が分かり、現在は宿のカフェとして一部が利用されています。

(2)登録有形文化財制度と地域ブランディング

木造3階建ては、新しいものを建てるのが非常に難しいです。そこで、登録文化財制度を活かした地域ブランディングを行うことが有効となります。

残っている建築の中からいいものを、一定数まとまって一斉登録申請することで、近い将来にガイドブックになるなどのブランド化が期待できます。

(3)リノベーションと用途変更

リノベーションによる魅力の増加も有効です。商用の場合は、用途変更が難しいですが、旅館のままでは今後維持が難しい場合、旅館と飲食や、旅館と物販などの用途変更を伴わない複合化がおすすめです。

リノベーションについては、民間事業者でできればいいですが、できない部分に関しては、「まちづくり会社」を立ち上げて行うことも視野にいれては如何でしょうか。

以上、「城崎温泉」における木造三階建て建築物を活かしたまちづくりの先進事例をご紹介いたしました。実務やNPO活動などに参考になる部分がございましたら、ぜひ、ご活用ください。