建築物の規模による構造計算の方法において、構造計算が不要である建物の規模は、木造だと2階建て以下又は延べ面積500㎡以下となっています。

しかし、本当に構造計算は不要なのでしょうか。構造計算不要というのは誤りで、実際には「簡易な計算」が必要なのです。

1) 簡易な計算とは

建築基準法上では、「構造計算」ではなく、「仕様規定」に位置付けられていますが、状況によって計算すると違う値になるものですので「仕様規定」とは言い難く、きちんと計算する必要があります。

(1) 壁量の確保(壁量計算)

1981年(昭和56年)に規定されました。地震力によって算出する場合と風圧力によって算出する値のうち大きい方を採用します。

地震力によって算出する値は、軟弱地盤の場合に必要壁量を1.5倍することにご注意ください。なお、ここでいう軟弱地盤とは、地盤種別の「第三種地盤」です。

大きく3つあり、一つ目は「腐植土、泥土その他これらに類するもので大部分が構成されている沖積層(盛り土がある場合にはこれも含みます)でその深さが30m以上のもの」、二つ目は「泥沢、泥海等を埋め立てた地盤の深さが概ね3m以上であり、かつ、これらで埋め立てられてから概ね30年経過していないもの」、三つ目は「地盤周期等についての調査若しくは研究の結果に基づき、これらと同程度の地盤周期を有すると認められるもの」です。

風圧力によって算出する値は、風荷重の方向と、それに抵抗する耐力壁の方向を間違えないように注意が必要です。

(2) 壁配置のバランス(四分割法)

2000年(平成12年)には、必要壁量の計算において、耐力壁の釣り合いのより配置の規定が定められました。一般的に四分割法といいます。

これを満たすことにより、木造建物の地震時のねじれ変形を防ぐことにつながります。矩形の建物だと、比較的バランスよく耐力壁を配置できますが、矩形ではない建物だと、バランスよく耐力壁を配置することが難しくなります。

(3)柱頭・柱脚の接合方法(N値計算法)

これも、2000年(平成12年)に、N値計算法による仕口の緊結方法が規定されました。N値計算を行うことで、柱にかかる浮き上がりの力を計算し、必要な金物を設置することができます。

以上のように、建築基準法の改正から木構造の構造検討内容の変遷を見ることでき、実際に、構造計算不要とされている建築物でも、「簡易な計算」が必要であることがお分かりいただけましたでしょうか。実務等において参考になる部分がございましたらぜひご活用ください。