木造の伝統的工法を採用しようとするときに、構造計算が必要となり費用と手間がかかるなどの問題があります。しかし、建築基準法の告示において規制緩和が行われましたので、詳しくお伝えいたします。

1)柱と基礎の接合方法

今までは、柱を基礎に緊結しない場合は限界耐力計算等の高度な構造計算が必要となっていました。しかし、平成28年の告示690号により緩和が規定されました。

木造建築物の土台から上の部分は、一般に基礎が一体となっていることを前提として設計されています。したがって、基礎に関してはある程度の地盤変状が発生しても、亀裂の発生で一体性が損なわれないことが必要となります。

(1) 柱と基礎をだぼ継ぎ、その他国土交通大臣が定める構造方法により接合

土台を設けずに柱に直接緊結する構造方法も認められています。この場合、水平方向に動かない構造方法により接合する必要があります。

(2) 当該柱に構造耐力上支障のある引張力が生じないことを確認した場合、土台なしでも構造計算が不要

鉛直方向について、構造耐力上支障のある引張力が生じないか、引張力が生じても安全かを確認する必要があります。しかし、平屋建ての建築物で、延べ面積が50㎡以下の場合は上記の内容を検討しないとき、土台なしでも構造計算は不要です。簡易な建物では土台の緊結方法に規定がありません。

2)含水率の基準緩和

壁量規定によらない場合の木材の品質は原則として15%以下となっていました。しかし、昭和62年告示1898号の最終改正である、平成28年6月1日には、径24mmの込栓を用いた接合またはこれと同等以上に乾燥割れにより耐力が低下するおそれの少ない接合とした場合は、含水率30%以下としても良くなりました。

24mm程度の込栓打ちほぞ差し仕口など、部材に乾燥割れが発生しても接合耐力が低下しないことが実験的に証明されています。この場合においては、繊維飽和点以上の含水率30%程度の材料を用いても構造耐力が低下しないこととなり、製材の日本農林規格における含水率30%以下であることが担保された天然乾燥材を使用して差し支えないものといえます。

3)床組・小屋組の火打材の設置

平成28年告示691号によって、木板等を告示で定める基準により打ち付ければ、火打材なしでも構造計算が不要になりました。

以上のように、構造計算を行わなくてもよい緩和規定が告示によって具体的に明示されています。伝統的工法を設計される際など、実務等において参考になる部分がございましたらぜひご活用ください。