過去地震による被害を検証すると、地盤と基礎に関する被害が圧倒的な割合を占めているにもかかわらず木造住宅の基礎に関する法的な規制が緩い状態でした。

ここでは、軟弱層の厚さが不均一な地盤に関しての対策の残りをご紹介します。

1) 不安定な擁壁

造成地において擁壁が存在する場合、擁壁を設計する際に見込んだ建物荷重に大きなばらつきがありますので注意が必要です。木造2階建て程度の重量を見込んでいる場合もあれば、木造の平屋建て程度しかみていない場合、ひどいときは地盤上に載る建物荷重を全くみていない場合もあります。

(1) 予想される被害

地震時に雨水により擁壁が水平移動すると建物が傾きます。さらに、地震時や雨水等により擁壁が崩壊すると、建物に大きな損傷を与える可能性があります。

(2)対策

基礎・地中梁の剛性を高めて不同沈下を防ぎ、擁壁を補強または新設することが必要です。

2) 傾斜した基礎上に厚さの異なる盛土地盤

もともと傾斜している地盤の上に、盛土または軟弱層が堆積してできた敷地では沈下量のばらつきが生じ、不透水層の上を水が流れて地滑りを起こす恐れがあります。

(1)予想される被害

3つの被害が予想されます。一つ目は「層厚の違いにより不同沈下が生じやすい」、二つ目は「盛土層が流され、建物が傾斜する可能性がある」、三つ目は「地滑りを起こす可能性がある」です。

(2)対策

3つの対策が考えられます。一つ目は「基礎・地中梁の剛性を高め、不同沈下を防ぐ」、二つ目は「杭または柱状改良などにより良好な地層に支持させる」、三つ目は「軟弱地盤の層厚が薄い場合、表層改良を行う」です。

3)深い谷部などを埋め立てた地盤

沼や谷地を埋め立てた地盤では、地震時にさざ波のような現象が起きて、もともとの地盤と埋め土の境界付近で地割れが起きやすくなっています。

(1)予想される被害

3つの被害が予想されます。一つ目は「層厚の違いにより不同沈下が生じやすい」、二つ目は「盛り土層が流され、建物が傾斜する可能性がある」、三つ目は「地滑りを起こす可能性がある」です。

(2)対策

3つの対策が考えられます。一つ目は「杭または柱状改良によって良好な地盤に支持させる」、二つ目は「軟弱地盤の層厚が薄い場合、表層改良を行う」、三つ目は「基礎・支柱梁の剛性を高め、不同沈下を防ぐ」です。

以上のように、地盤ごとに、そして軟弱層の分布の仕方によって対策が異なってきます。実務等において参考になる部分がございましたらぜひご活用ください。