前回まで、書庫設計について、いくつかのポイントをご紹介してきました。
今回は、書庫施設の参考実例として、国会図書館本館、関西館の書庫についてご紹介します。

1) 東京本館

(1)本館書庫

・書庫完成年: 第一期1961年 第二期1968年
・書庫面積 : 32,185㎡
・収蔵能力 : 450万冊

書庫部分の断面は、高い階高の建築空間6層に、各々3層(一部2層)の積層書架を入れた、計17層の書庫空間となっています。

積層書架とは、背の高い空間に、固定書架や集密書架を2層以上積み重ねて収蔵能力を高めた書架形式を指します。
積層の方法として、鉄骨を組んで中二階を形成する方法や、下層の書架自体を構造体として上層を支える方法などがあります。

上層の作業床が、かつては建築床と見做されなかったことから、限られた容積率のなかで出来るだけ書庫の実面積を確保したい場合など、収蔵効率を高める方法として広く採用されました。
現在では、建築床として取り扱われるため、積層書架を採用するメリットも実例も、かつてほど多くありません。

本館書庫の積層書架は、1.4m×0.9m程度のスパンで配置された小径鋼材が、構造材として上層を支えるとともに、書架棚の固定支柱も兼ねるシステムとなっています。

(2)新館書庫

・書庫完成年: 1986年
・書庫面積 : 45,816㎡
・収蔵能力 : 750万冊

固定書架、集密書架を中心とした、地下8層の書庫です。

地下は、外気の影響を受けにくいため、安定した室内環境を実現しやすく、浸水に対する対策を十分に図ることができれば、書庫に適していると言えます。

一方、地下8層もの空間となると、書庫内作業員に対する影響も考慮する必要があるかもしれません。
書庫ゾーン中ほどに設けられた、迫力ある8層吹抜の「光庭」は、国会図書館発行の資料によると、書庫内で働く人に安心感を与えるためと説明されています。

2) 関西館

・書庫完成年: 2002年
・書庫面積 : 23,926㎡
・収蔵能力 : 600万冊

地下2階から地下4に書庫が設けられています。
固定書架、集密書架の他に、約140万冊程度の収蔵能力を持つ自動書架が2層吹き抜けの空間に納められています。

関西館では現在、書庫の増築工事を行っています。
前回記事では、収蔵資料の増加に合わせて、書庫内部を段階的に整備する方法について触れましたが、関西館の計画は、大規模な書庫建物を段階的に増築してゆく壮大なもので、現在の工事は全3段階の内の第1段階です。

国内最大の書庫増築計画といってよいと思います。

以上、国会図書館本館、関西館の書庫に関して紹介させていただきました。
東京本館、関西館とも、施設の見学ツアーが用意されていますので、書庫の一部も実際に見ることができます。
機会がございましたら、訪れてみてはいかがでしょうか。