昨今、改修手法として注目されている減築について、要点をご紹介します。

1)減築を採用する理由

大きく分けて、2つあります。

(1)コンパクト化

使用状況の変化等により余剰化した空間を、除去することによって、建物をコンパクト化し、使い勝手の向上や、維持費の低減を図ろうとするものです。

(2)耐震性の向上

上層階を除去して建物重量を軽減し、耐震性の向上につなげようとするものです。
やはり空間が余っており、上層階を減らしても残りのフロアで、機能再編が可能な場合等に採用できます。

特に中高層の建築においては、上層階を減築しないで耐震改修を行う場合よりも、全体的に補強量が少なく合理的な改修設計となるほか、経済性においても有利になることが期待できます。

2)建築法令上の取り扱い

原則として、増築や大規模の模様替等を伴わない、純然たる減築は、確認申請を要しません。

ただし、上層階減築の場合は、屋根の全てまたは大半が再構成されると考えられるため、計画によっては、大規模の模様替と判断される可能性があります。
また、除去階の柱を管柱と見るか、通し柱と見るかによっても、大規模の模様替にあたるかどうかの判断が変わると考えられます。
具体計画にあたっては、確認審査機関への確認が必要です。

3)工事の手順

(1)平面的な減築

・除去部分および除去工事に必要な部分から、物品等撤収します。

・除去部分と残存部分にまたがる設備配線・配管類の、切断・盛替処理を必要に応じて行います。

・解体除去します。

・建物切断部分に外壁を新設するなど必要な工事を行います。

(2)上層階の減築

・平面的な減築の場合と同様、除去階からの退去および設備配線・配管類の処理を行います。

・直下階は、一時的に防水性が低下することや、事故防止の観点から、一時退去が必要です。
直下階より下の階も、工事中の安全や騒音を考慮し、できるだけ一時退去することが望ましいです。

・上層階を部分ごとに慎重に解体し、除去部材はクレーンで地上に下ろします。したがって、地上に作業ヤード等が必要です。

・除去後、防水工事や屋根工事を行います。除去階の直下階は、粉じんや漏水等、除去工事期間中の影響を大いに受けることが考えられるため、内装はスケルトンリフォームすることを前提にしておくと安心です。

(3)居ながら改修

解体工事は音、振動、粉じんなど、周囲に与える影響が大きく、また危険性も比較的高いので、除去ゾーンから適切な距離をとれる位置まで一時退去することが必要です。
したがって、一定規模以上の建物でない限り、居ながら改修は困難です。

以上、減築に関して紹介させていただきました。
実務等において参考になる部分がございましたら、ぜひご活用ください。