今回は、改修工事において確認申請が必要となる場合、つまり、大規模修繕や大規模模様替(以下「大規模模様替等」)の際の遡及内容に関してご紹介します。

下記は、大規模模様替等の際、遡及適用されるおもな条項です。
ただし、条項によっては、一定条件のもとで遡及適用が緩和される場合があります。

1)単体規定

(1)第20条(構造耐力)

原則として遡及適用されますが、以下の緩和があります。

まず、対象建築物がいくつかの「独立部分」、つまりエキスパンションジョイントなどの接続方法を用いて構造的に独立したいくつかの部分に分かれている場合、改修しない「独立部分」には遡及適用されません。

次に、改修によって、対象建築物の構造耐力上の危険性が増大しない場合、原則として遡及適用されません。
このため、仕上材を変更する際、その重量が既存仕上材より重くならないよう選定するなどの方法がしばしば採用されます。

(2)第22条(屋根)

敷地がいわゆる法22条地域内の場合、遡及適用されます。
既存屋根が不燃材料等でない場合等、現行規定に適合させる必要があります。
続く第23条~24条も同様です。

(3)第28条(採光・換気)

改修する居室にのみ、遡及適用されます。

(4)第28条の2第1項~2項(吹付アスベスト、アスベスト含有吹付ロックウール)

改修する部分にある吹付アスベスト、アスベスト含有吹付ロックウールは除去する必要があります。
改修しない部分にある吹付アスベスト、アスベスト含有吹付ロックウールは、基準に従った囲い込みや封じ込めをする必要があります。

(5)第35条(そのうち、廊下、階段、出入口、非常用照明関連)

原則として遡及適用されますが、対象建築物がいくつかの「独立部分」、つまり開口部のない耐火構造の壁・床で区画されたいくつかの部分に分かれている場合、改修しない「独立部分」には遡及適用されません。

(6)第35条(そのうち、排煙関連)

原則として遡及適用されますが、対象建築物がいくつかの「独立部分」、つまり準耐火構造の壁・床または防火設備で区画されたいくつかの部分に分かれている場合、改修しない「独立部分」には遡及適用されません。

(7)第35条(そのうち、非常用進入口関連)
(8)第35条の2(内装制限)
(9)第36条(そのうち、防火区画関連)

これらは対象建築物に対し、全館的に遡及します。
各条項の既定の対象になる建築物の場合は、注意が必要です。

(10)第40条(地方公共団体の条例による制限の付加)

建築基準法上は、条例は遡及緩和されません。
各自治体に、条例の遡及適用について確認する必要があります。

(11)補足 第37条(建築材料の品質)について

建築基準法第86条の7(既存不適格建築物の遡及緩和に関する条項)では、法第37条の遡及緩和について触れられていませんが、H12建設省告示1446第1ただし書きにより、既存不適格建築物の既存部分に法37条は適用されません。

2)集団規定

大規模修繕、大規模模様替では、集団規定の大部分が遡及緩和されています。
遡及される条項としては以下のようなものがあります。

接道(第43条)、防火・準防火地域の屋根・壁・開口・看板の制限(第63~66条)、地区計画(第68条の2)など。

以上、大規模模様替等の場合の、おもな遡及条項に関して紹介させていただきました。
参考になる部分がございましたら、ご活用ください。
なお、設計の際は、具体案を持って確認審査機関に確認することが必要です。