建築現場では、特注のアルミ鋳物部材 - アルキャストは、おもに外装パネルや造作部材などとして用いられています。
前回は、アルキャストの特徴や製造法について概説しましたが、今回は、アルキャストの代表的な仕上およびその実例についてご紹介します。

1)素地仕上げ

アルミ素地のまま、フィニッシュとする仕上です。
鋳造方法によっては、鋳造過程で鋳肌への汚れ付着が避けられない場合もあり、ブラスト処理によって鋳肌表面を整えた上、素地仕上とすることもあります。
原則として、耐蝕性は自然に発生する酸化被膜に頼ることになります。
着色や塗装をしないので、アルミの素地色を活かした意匠とすることができます。

素地仕上の実例として、清水建設本社(東京都中央区)があります。
アルキャストにコンクリートを打ち込んだPCフレームで、外装全体を構成しています。

2)陽極酸化処理、二次電解着色など

アルミサッシの表面仕上としておなじみの表面処理方法です。

陽極酸化処理とは、電解処理により人工的にアルミの酸化被膜を厚く生成させるもので、アルマイト処理ともよばれます。

アルマイト処理後(一次電解後)、アルマイト表面構造内に無機物を析出させて着色したものが二次電解着色です。
いわゆるステンカラーなどが可能です。

また、アルマイト処理時の諸条件の調整により、通常はシルバー色のイメージとなるアルマイト処理を、グレー色などにする技術もあります。
二次電解着色に拠らないこの着色方法は、電解発色、自然発色、合金発色などと呼ばれます。

電解発色の例として、 新丸の内ビル(東京都千代田区)があります。
低層部フレーム部分を、グレー色のアルキャストでカバーしています。
鉄骨では表現できない重厚感のある金属表現を与えています。

3)塗装仕上

ウレタン系、フッ素系樹脂塗料などで塗装する仕上です。
指定の色に仕上げられるほか、鋳肌の色を活かしたクリアー塗装仕上とすることもできます。

塗装仕上の実例として、目黒区役所(東京都目黒区)があります。
PCパネルでは実現できない、繊細な白色のアルキャストルーバーパネルで外装全体を覆っています。

4)その他

黒色塗装した後、ワイピング(拭き取り)をすることで、塗材が鋳肌の凹凸面に残り、
重厚感ある表情にすることができます。塗装仕上げの一種ですが、この仕上げ方法を松煙仕上などと呼ぶことがあります。
アルミの素地色と鋳物のテクスチャーを活かした、アルキャストならではの仕上げの一種といえます。

実例として、身延山久遠寺宝蔵(山梨県南巨摩郡)があります。

以上アルキャストの仕上げと実例についてご紹介しました。
実務において参考になる部分がございましたら、ぜひご活用ください。