建築物を設計する際、耐震性能は何を手掛かりに設定すればよいでしょうか。
一つの目安として、いわゆる「耐震グレード」と呼ばれるものがあります。
今回は、耐震グレードについてご紹介します。

1)耐震グレードとは

国土交通省の「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」という基準では、官庁施設に関して、施設の性格に応じて、ランク形式で求められる耐震性能を示しています。

また、各自治体も、その保有施設に関して同様の基準を設けていることがあります。

これらは法令ではなく、国又は自治体の建築物に関する、いわば内規のような位置づけですが、民間案件でも、計画内容によっては、準用することが考えられます。

「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」では、「耐震安全性の分類」と表現されているこのランク分けのことを、設計の現場では「耐震グレード」と呼ぶことがあります。

2)「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」における耐震安全性

大きく三つの部位について、耐震安全性の確保が謳われています。
すなわち、構造体、建築費構造部材、建築設備です。
それぞれに「耐震安全性の分類」つまり「耐震グレード」が設定されています。

3)構造体の耐震グレード

2)の三つの部位のうち、特に構造体について、耐震グレードの内容を紹介します。

(1)分類1

「大地震動後、構造体の補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られるものとする。」
と規定されています。

対象となる施設は、災害応急対策活動に必要な施設のうち重要な施設、危険物を貯蔵又は使用する施設のうち特に重要な施設です。

(2)分類2

「大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて機能確保が図られるものとする。」
と規定されています。

対象となる施設は、災害応急対策活動に必要な施設、危険物を貯蔵又は使用する施設、多数の者が利用する官庁施設です。

(3)分類3

「大地震動により構造体の部分的な損傷は生じるが、建築物全体の耐力の低下は著しくないことを目標とし、人命の安全確保が図られるものとする。」

と規定されています。
対象となる施設は、分類1および2以外の施設です。

4)重要度係数

分類1~3の性能を確保するために、構造計算の際、必要な耐力の割り増しを行うことになっています。
具体的には、必要保有水平耐力を、分類1では1.5倍、分類2では1.25倍することになっています。

この係数のことを、重要度係数(建築物の重要度に応じて適用される係数の意)と呼びます。
分類3は規定がないので、1.0倍つまり建築基準法通りとなります。

各自治体の基準では、「用途係数」と表現されている場合もあります。

以上、耐震グレードについてご紹介しました。
実務において参考になる部分がございましたら、ぜひご活用ください。