多くの設計者にとって、生産施設の設計は、他の用途に比べ、経験によるノウハウの蓄積が豊富ではなく、その関連法令についても、全体像が見えにくく戸惑うことがあるのではないでしょうか。

今回は、生産施設の設計に関わる際、まず最初に注意すべき法令である、工場立地法(以下「法」)について概説します。

1)工場立地法とは

工場の立地に関して、環境の保全を図りつつ適正に行なわれるようにするため、諸制限を定めた法法令です。

2)対象施設

敷地面積が9,000m2以上、または、建築面積が3,000m2以上となる工場等を新設する場合該当し、届出義務が生じます。
また、敷地拡張、増築などにより、敷地面積が9,000 m2以上、または建築面積が3,000m2以上となる場合を含みます。

3)担当窓口

これまで、県または市でしたが、法改正により平成29年4月より原則として市町村に移管されています。
担当課としては、産業振興課、商工観光課、まちづくり推進課などといった名称の課であることが多いです。詳しくは、地域の行政機関にお問い合わせください。

4)規制内容

生産施設、緑地、環境施設の面積率の上限が定められており、遵守する必要があります。
この面積率の上限は、法第4条に基づき別途公表されている「工場立地に関する準則」で定められています。

(1)生産施設面積率

生産施設とは、物品の製造工程(加工修理工程を含む)等を形成する機械又は装置が設置される建築物、または、そのような製造工程を形成する機械や装置で、屋外に置かれるものを言います。
倉庫や事務棟などは含みません。

この生産施設の、敷地面積に対する割合の上限が、業種別に30%~65%の範囲で指定されています。

(2)緑地面積率

敷地面積に対する緑地面積の割合が、20%以上として定められています。

(3)環境施設面積率

環境施設とは、工場周辺の生活環境の保持に寄与する施設で、噴水・池などの修景施設のほか、運動場や広場、体育館などを指します。また、(2)の緑地も環境施設に含まれます。

この環境施設の、敷地面積に対する割合が、25%以上として定められています。

(4)既存工場に関する緩和

昭和49年6月28日以前に設置された工場に対しては、緩和規定が適用されます。

5)市町村による準則

4)でご紹介した準則は中央官庁によるものですが、緑地面積率と環境施設面積率については、法第4条の2に基づき、各市町村も独自に準則を定めることが可能となっています。

自治体によっては、緑地率を5%まで低減していることもあり、施設の全体計画に大きく影響します。

以上、工場立地法についてご紹介しました。
実務において参考になる部分がございましたら、ぜひご活用ください。