天空率とは、平成14年建築基準法に追加された第56条7項の高さの制限(道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限)の緩和を受け、建築基準法施行令に導入された考え方です。

具体的には、「ある測定点から視野角180°の魚眼レンズを天頂に向けたときに写る空の部分の空全面に対する割合」を指します。

天空率導入の経緯

従来の高さ制限では、勾配の条件に基づいて道路に面して斜めに切り落とした建物が多くみられましたが、そのように法規に従った形状の建物は日照、通風など居住性の向上と結びつくものとは一概にはいいがたいものでした。

天空率の導入によって、斜線制限の範囲内で建てられる建築物(適合建物)と同等以上の採光が可能になりました。つまり、その採光率に比例する空の量を確保する条件のもと、これまで以上に幅のあるデザインが可能になりました。

基準法上の天空率の求め方

本来の天空率とは全天に対する測定地点でみえる真上方向の空の量ですが、基準法では計画建物(これから建てようとする建物)のみによって欠けた空の量だけを計算します。

また、天空率の計算のために、任意の測定点から天空を正射影投影したものを天空図と呼びます。

天空率(%)=(As-Ab)/As
As:測定点を中心として天空を正射影した円の面積
Ab:測定点を中心とする想定半球への建物投影面積

測定点の位置と間隔は道路斜線、隣地斜線、北側斜線の緩和ごとに異なります。また、2つ以上の道路が交差する場合は、道路ごとに測定点を設定しなければなりません。

道路斜線の緩和の場合は敷地の反対側の道路境界線上で、道路幅の2分の1以下の等間隔ごとに設定します。

隣地境界線の緩和の場合は高さ31m区域で非住居系は敷地から12.4mが測定ラインで、測定点は6.2m以内で等分、住居系は敷地から16mが測定ライン、測定点は8m以内で等分します。

北側斜線の緩和の場合は、第一種・第二種低層住居専用地域での測定ラインは敷地境界線から4m、測定点は1m以内で等分、第一種・第二種中高層住居専用地域の場合は測定ラインは敷地境界線から8m、測定点は2m以内で等分となります。

そして、上記の通り、計画建物の天空率が適合建物と同等以上の天空率を上回った場合に限り、適合建物と同程度以上の採光、通風などが確保されたとみなされ、天空率の緩和措置が認められます。

メリット・デメリット

天空率の導入のメリットはもちろん、建築デザインの可能性が広がったことです。

例えば、道路に面した部分について、道路斜線制限に従った場合、幅広で低い建築だったものが、天空率を用いた場合、幅の狭い高い建築も可能になりました。

また、建築の増改築工事をする際に何らかの理由で前面道路を拡幅することになり、既存建築のパラペット等が道路境界後退後の斜線制限にかかってしまうような場合にも、天空率計算による高さ制限の緩和の検討ができます。

デメリットは、計算が複雑であることや天空率申請に複雑な計算データの提出が求められることです。

天空率計算は斜線制限のように計算が簡単ではないため、コンピューターで作図・計算するのが一般的です。

無料で公開されているJw_cadにはその検証機能が備わっているため、Jw-cadの操作が可能であれば図面・計算資料を作成することもできます。

このほか、天空率による斜線制限の適用除外を受けるための天空率申請の際に、同一建物に関する他の高さ制限、つまり道路斜線制限の緩和を申請する場合には、隣地斜線、北側斜線についても天空率計算データの提出が求められます。

まとめ

以上のように、天空率は複雑な計算を伴いますが、斜線制限の緩和によってデザインの幅が広がります。より高度なデザインを目指したい方ははその計算方法を習得することが望ましいでしょう。