近年、日本国内で建築分野において部材として木材が再評価され、公共施設の建築などで使用されているケースが増えてきています。

当ブログでも以前より何度か木造建築や関係する法令、用語について触れてきましたが、改めて記事として取り上げてみたいと思います。

 

用語

 

まずは木材に関する用語についておさらいします。

・製材:伐採した木材を建築用に角材や板材にしたもの。例として2×4材(ツーバイフォー)が挙げられます。

・集成材:挽き板(のこぎりなどで挽いて切った木の板、ラミナとも呼ぶ)や小角材のピースを乾燥させてから、接着剤などで接合して作る木材のこと。逆に天然の木をカットして作るものは無垢材と呼びます。集成材のメリットとしては無垢材より品質が安定しやすいという点が挙げられます。

 


写真は集成材が用いられている金沢駅鼓門。美しい駅舎として知られています。

・木質ハイブリッド集成材:内部に鋼材を内蔵した集成材。集成材が内部の鋼材の耐火被覆としての役割も担っています。

 


写真は国内初の木質ハイブリッド構造を採用したエムビルです。

・CLT:Cross Laminated Timberの略。それぞれの単語の直訳は「交差」「層状の」「木材」で、挽き板(ラミナ)を敷きならべて接着し作られる集成材です。層同士で繊維方向が直交するようになっているのが特徴です。欧州で開発され、近年国内の建築でも用いられるようになってきました。

・LVL:Laminated Veneer Lumberの略で、単板積層材と言い単板を重ねて作ります。単板はスライサーなどを用いて生成されるので、挽き板より薄いものが積層された木材です。

この中でも特にCLTが注目されていて、CLTを用いた事例が急増しています。また、構造が木造ではなく鉄骨造と木造を組み合わせた混構造となっている建築も増えています。

 

再注目されている木造建築、その理由

 

木造が再注目されている背景にはまず国内の人工林が利用期に入ったことがあります。

日本は国土の約3分の2を森林ですが、戦後から植林が続けられ人工林は約30億㎥になるまで充実してきています。樹齢が50年以上の人工林の割合も50%を超え、今まさに利用期を迎えているのです。

利用期とは言うが木を伐採したら環境に悪いのではないか、と感じる方もいらっしゃるかも知れません。しかし実は人工林は、自然に発達してきた森林とは異なり、その性質上適度に人の手が入らないと荒廃してしまうものなのです。そのため間伐や再造林などの整備が必要で、「植える→育てる→使う→育てる」といったサイクルを形成することが大切です。つまり、人にとっても人工林にとっても「使う」タイミングになっているということになります。

もう一つの背景として、いろんな分野で取り上げられるCSRやSDGsも上げられます。CSRとはCorporate Social Responsibilityの略で、企業が社会に対して果たすべき責任のこと、SDGsはSustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標のことです。建築物は多くの人が携わって作られ、建設された後も多くの方に使われます。ですので、建築という分野が社会に対して果たすべき責任も必然的に大きくなるわけです。特に街並みや景観に与える影響を考えると、木材を積極的に用いてファサードや内観に現わせば、都市や街の中で人々に落ち着きや居心地の良さをもたらすでしょう。

 

木材の利用に関する支援

 

そういった背景があり建築の分野での木材の利用を推進するため、国は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を2010年に施行しました。これは3階建て程度の公共建築物について原則としてすべて木造化を図るというものです。さらに林野庁でも「木造公共建築物の整備に係る補助事業」を実施し、木材を利用したプロジェクトを支援しています。

 



またこれらの法整備・事業などが進む中で、更なる国産材活用に向けた好機として期待されているのが2020年の東京オリンピック・パラリンピックです。

隈研吾設計による新国立競技場も木材を多く使用し、その良さを存分に発揮した建築となる予定です。2020年を契機に国内での木材利用がより一層進むことが期待されます。

 

 

※写真はすべて筆者撮影

※設計者などの人名は敬称略