CLTとは、Cross Laminated Timberの略称で、ひき板(ラミナ)を並べた層を、板の方向が層ごとに交差するように重ねて接着した直交修正板のことです。

1995年頃からヨーロッパで開発が行われた構造材料ですが、近年日本においてもCLT建築が登場してきています。

ここでは、CLT建築の現状に関して設計する上でのメリットとデメリットをお伝えしていきます。

1) 設計する上でのメリット

CLT建築のメリットは、壁式鉄筋コンクリート造と似ています。設計される際にも、壁式鉄筋コンクリートをイメージしていただくと解りやすいです。

(1) 自由なプランが可能です
木造在来軸組構造は1階と2階の柱や壁の位置を揃える必要がありましたが、2階建ての2Fの床をCLTとすると、1階のプランに関わらず2階を自由にプランすることが可能です。

(2) 大胆な持ち出しができます
2階の床をCLTとすることで、薄い床のまま2階全体を1階より大きく持ち出すことが可能です。また、階段の壁と踏板をCLTにすると、壁から持ち出し式シンプルな階段とすることができます。

(3) 薄い床と薄い屋根が実現します
2階の床の屋根をCLTとすることで、天井懐が必要なく、建築の高さ制限が厳しい場所でも全体の高さを抑えながら気持ちの良い天井高を確保することができます。

(4) 壁やスラブに自由な形の開口を開けられます
CLTで作られたスラブや壁には自由な形の開口部を開けることができます。また耐震壁の量を最小限に抑えて大開口部を作ることが可能です。

2) 設計する上でのデメリット

(1) 価格がまだ高めです
CLTを加工できる工場が限られていて普及はこれからということもあり、木造在来軸組工法や2×4よりは価格は高いです。しかし、工場で作ってきたものを現場で組み立てるため、工期短縮が図れて結果として壁式鉄筋コンクリート造よりは安くなります。現状では戸建て住宅よりは集合住宅の方がCLT建築にするメリットが高いです。

(2) CLTそのままの仕上げに限界があります
CLTの木材そのものを仕上げとしたいところですが、まだ雨水の侵入を妨げることができないため、外部に面したところには別途仕上げを施し、CLTそのものは見えなくなってしまいます。

(3) 配管・配線スペースがありません
壁式鉄筋コンクリート造も同じですが、構造をそのまま仕上げとして見せたい場合、配管・配線スペースが露出しますのでデザインの工夫が必要です。

今後は、CLT建築の壁倍率などの法整備が行われていき、普及に伴い価格が下がるとCLT建築を採用するハードルが下がる可能性もありますので、今後の動向にぜひご注目下さい。