CLTとは、Cross Laminated Timberの略称で、ひき板(ラミナ)を並べた層を、板の方向が層ごとに交差するように重ねて接着した直交修正板のことです。

前回設計する上でのメリットとデメリットを説明させていただきましたが、今回は共同住宅をCLT建築とする際の設計のポイントをご紹介します。

1) 設計のポイント

国産木材の新たな需要開拓が期待されているCLT建築は、技術基準が定まる前から、個別認定を受けたCLT造の建物が続々と誕生しています。国内初のCLT造となった高知の共同住宅や、その1年後に完成した岡山、福島の共同住宅において見えてきたCLT建築の設計のポイントをご説明します。

(1) 主要な構造壁の位置をそろえます
集合住宅の各戸の大きさは同じとし、主要な構造壁の位置を揃えます。構造としても上下階の壁の位置が揃っている方が有利ですし、加工、組み立てにおいても施工期間の短縮につながります。同じ構造システムにした場合でも、物件ごとに少しずつ違いを設けることもでき、需要に応じたプランが可能です。

(2) 床と壁の取り合い部に隙間を設けます
集合住宅は遮音性能が問われますが、床と壁の取り合い部に5mmの隙間を設けると遮音性能の向上につながります。

(3) 乾式の床材で遮音性能を向上させます
海外のCLT造では、床の遮音にモルタルを敷く湿式工法が採用されましたが、モルタルが受ける床の重量振動がCLTの壁を介して建物内を伝わっていました。しかし乾式の床材は、重量床衝撃音対策を講じることができますので、おすすめです。

(4) 気密性のアップを図ります
CLT外壁と基礎とを気密化すると1階住戸の気密性が低下した事例もあり、気密ラインを1階床下に設ける必要があります。また断熱は、地域ごとに外張り断熱工法がよいのか、内断熱工法が良いのかを検討する必要があります。

2) CLTの今後の展開

今後は、居住性を高めつつ実績を重ねていくことになります。普及型CLT建築として、解体もしやすい木造同士の混構造(CLTと軸組工法)が検討されています。

CLT床に土台と柱を立てて、柱間にCLT壁を落とし込み、梁と天井CLTを載せます。軸組材が鉛直力を受け、CLTの壁が水平力を負担します。

この構造の場合許容応力度計算で解くことができ、分解再利用しやすいので仮設住宅など仮設的な使い方ができそうです。

今後CLTは普及に向けて、様々な実験や検証の上課題の解決等が行われていきます。国産木材の需要開拓に向けて、建築の新たな可能性「CLT建築」の動向にご注目ください。