建築士が受講できる講習は多種多様にありますが、その中でも仕事に活かせるおすすめの講習をご紹介しています。前回は「建築設計業務におけるBIMの活用に関する」講習をご紹介しましたが、今回は「ZEHのつくり方」講習を詳しくご紹介します。

1) ZEHとは?

ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)の略で、「使うエネルギー量」が「創るエネルギー量」との差し引きで概ねゼロ以下となる住宅のことです。

「省エネルギー」では、断熱性能の向上や高効率設備の導入によって住まいに必要なエネルギーを最小にします。「創エネルギー」では、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入によって住まいに必要なエネルギーを創ります。

2) ZEHはなぜ必要?

住宅でのエネルギー消費量は年々増加傾向にあります。なんと、1973年から2013年での住宅部門の最終エネルギー消費量は2.0倍にも増加しています。

また、東日本大震災以降に原子力発電が停止し、化石燃料による発電の依存が高まり、燃料コストの増大、電気代の値上がりなどの影響が出ています。

2015年に、地球温暖化などの気候変動に対する国際的な枠組みを決める会議(COP21)がパリで開催され、2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が採択されました。

「パリ協定」では、世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃未満に抑える努力をすることとなり、今世紀後半には人為的な温室効果ガス等の排出量をゼロにしなくてはなりません。

そのためには、家庭のエネルギー消費量を抑えてCO2排出量を低減し、ZEHの取り組みを増やす必要があるのです。

3) その他のZEHの利点

まず一つ目は「快適性」です。断熱性能を高めることで、暖房していないところでも室内の温度差が小さくてすみ、家中どこでも暖かく、健康的で快適な居住環境が実現します。

例えば、暖房しているリビング・ダイニングと暖房していないトイレとの温度差は、断熱性能が低い家では6.2℃もありますが、断熱性能が高いと2.0℃しかありません。

二つ目は「健康維持・増進」です。家庭内の死亡事故の多くが寒い時期の入浴中におこっています。

その多くがヒートショックによって心筋梗塞や脳出血、脳梗塞を引き起こしたことが原因と考えられています。

断熱性能を高くすると、部屋間温度差が小さくなりヒートショックのリスクが低減できます。他にも、断熱により室内に結露・カビが生じず、アレルギーの発生を抑制する効果があります。

4) 利用できる助成金

二種類の助成金があります。一つ目は、経済産業省の「平成29年度ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」で補助金額は75万円です。

二つ目は国土交通省」の「地域型グリーン化事業」で昨年の補助金額は上限165万円でした。二つ目は今年度まだ発表されていませんが6〜7月には発表される予定です。

それぞれ、募集対象要件や求められている断熱性能基準などが異なりますのでご注意ください。

地球温暖化対策と、エネルギー問題解決に向けて、これからはZEHが当たり前になっていきます。全国的に展開されている「ZEHのつくり方」講習を受講の上、仕事に活かしていただければと思います。