近年、ホテル・グループホーム・診療所火災など、多数の死傷者が発生している火災事故が続いており、これらの事故において被害が拡大した原因の一つとして、建築物の老朽化や設備の作動不良など適法な状態で管理されていなかったことが考えられます。

それに伴い、平成28年6月1日に建築基準法が改正され「定期報告制度」の内容が見直されました。特に変わったことを中心にお伝えいたします。

1) 今回の建築基準法の改正で変わったこと

今回の建築基準法の改正により、所有又は管理する特殊建築物に関して、建築基準法第12条第1項及び第3項の規定により、建築物に関しては3年に1回、防火設備に関しては1年に1回(経過措置あり)、建築士又は法定の有資格者による調査を実施し、その結果を知事に報告しなければなりません。

(1) 定期報告対象の見直し

見直し後の対象は2つあり、「特定多数の者又は高齢者等が就寝用途で利用する建築物で避難上の安全性を確保する観点から、国で一律に定期報告の対象を定める」と、「それ以外の建築物は地域の実情に応じて、特定行政庁が指定できる。」になりましたので、これまで定期報告対象ではなかった建築物が新たに定期報告対象となる可能性が有ります。

(2)定期報告・検査を行う資格者制度の見直し

資格者制度が見直され、見直し後の調査員、検査員には資格者証が交付されます。

定期調査・検査を行う場合は、「一級建築士」、「二級建築士」、もしくは、「特定建築物調査員」「防火設備検査員」「昇降機等検査員」「建築設備検査員」の資格者証の交付を受けている資格者に依頼をする必要が有ります。

現行の資格者も、新たな資格者証の交付を受けなければ調査等を実施することが出来ないため、資格者証をご確認下さい。

また、一級建築士又は二級建築士は、資格証がなくても調査・検査は可能です。

さらに、防火戸・防火シャッター(随時閉鎖式のものに限る)は、新たに法律に位置付けられる「防火設備検査員」もしくは、一級建築士、二級建築士が検査する必要が有りますのでご注意ください。

これまでに、火災等により多くの犠牲者を出した建築物の多くは、定期調査・検査が未実施であり、建築物所有者等が建築物の危険性や適切な維持保全の必要性を認識していなかったことが、被害を拡大させた要因の一つであると考えられます。

こうしたことから、定期報告制度の必要性を建物所有者が認識し、災害の防止に努め、利用者の安全を守るために適切な実施を行うことが重要です。