木構造を理解し、設計するためには、その材料である「木材」のことをよく知る必要が有ります。

ここでは、過去の被害例から設計上留意する点を学び、部材設計を行う前に押さえておくべき点をご紹介します。

前回は「木材の2つの種類」と「ヤング係数」に関してご紹介しましたが、今回は「木材の異方性」と「木材の含水率」に関してご紹介いたします。

1)「木材の異方性」とは?

木材は、方向によって特性が異なる「異方性」を持つ材料です。工業材料である鋼材やコンクリートと違って繊維方向があるのが最大の特徴です。異方性は、主に「乾燥収縮」「強度・ヤング係数」に関して顕著にみられます。

(1)木材の「乾燥収縮」における異方性

木材の「含水率」が30%以下になると、木材は収縮し始めます。収縮率は「接線方向」が最も大きく、ついで「半径方向」、「繊維方向」となりますが、「繊維方向」は、ほとんど変化しません。

(2)木材の「強度」における異方性

強度については、荷重のかかる方向が繊維方向に平行であるほど高く、直角方向は低くなります。しかし、破壊状況をみると、繊維と平行な方向は脆く、直角方向は圧縮に対しては粘りがあります。
しかし、繊維方向に引っ張ると、強度は高いがもろくなり、繊維に直行方向に引っ張ると、割裂し、非常に脆いです。接合部の設計においては、このような特徴をしっかりと考慮した上で行うことが大切です。

2)木材の「含水率」とは?

含水率とは、木材に対する水分の比率です。木材の乾燥が必要な理由には大きく4つあり、一つ目「腐朽を防ぐ」、二つ目「シロアリを防ぐ」、三つ目「狂い・割れを少なくする」、「クリープ変形を少なくする」です。このうち、初めの2つは、断面欠損の防止を主な目的とし、後の2つは、寸法安定性の確保を主な目的としています。

(1)「含水率」の調整方法

木材における水分量は、特に変形量に影響するので、含水率が高い木材ほど変形しやすくなります。木材は吸放湿するときに変形するため、平衡含水率(含水率15%)以下に一度乾燥させてから平衡含水率になじませると寸法の変化が少なくなりますのでおすすめです。

もし、十分乾燥させずに加工した場合、変形だけではなく、割れ・狂い・腐朽を併発し、構造計算の前提とする寸法の安定性が著しく低下します。

しかしながら、無理に乾燥させると、香りや風合いなど生物的な木の良さが損なわれ、もろい脆性破壊を示すことがありますので注意が必要です。

「木材の異方性」と「含水率」に関して詳しくご紹介させていただきました。実務等において参考になる部分がございましたらぜひご活用ください。